飲食店のオーナーさん・店長さんはこれから飲食店を建てるにあたりグリストが必要なのか悩んでいませんか?
グリストとはグリストラップのことで排水溝から流れ出る油などを堰き止める箇所になります。
結論から言うと設置義務はありませんが、設置した方がいいと思われます。
法的にはグレイゾーンです。
しかし設置している方が長年油などを流し続けて排水溝を詰まらせて逆流や近隣えの迷惑で損害賠償の対象にならないためにもいいと思います。
私は飲食業界に30年携わってきて、色々なオーナーさんの元、飲食店の立ち上げ・立て直しをしてきました。
だからこそわかる細かなところを今回はまとめましたので、ぜひ参考に使ってください。
この記事を読むと、
がわかるようになっています。
最後までお付き合いください。
飲食店のグリストとは?設置義務がある?法令や設置方法は?
「グリスト」は、飲食店などの食品業界で使われる言葉で、正式には「グリーストラップ」と呼ばれます。グリーストラップは、食事の調理や洗浄において発生する油脂や固形物を含む廃水から、それらの不純物を取り除くための装置です。食品業界においては、設置が法律で義務付けられている場合があります。
以下は、一般的な情報ですが、地域や国によって法令が異なることがあるため、地元の規制に従うことが重要です。
グリーストラップの設置義務
- 設置義務:
- 一部の地域や国では、飲食店や食品業界の施設に対して、グリーストラップの設置が義務付けられています。これは、廃水中の油脂や固形物が下水道システムに流入して詰まりや環境問題を引き起こすことを防ぐためです。
- 規制機関と法令:
- グリーストラップの設置義務と規制に関する情報は、地元の規制機関や衛生環境部門、建築規制当局などによって管理されています。飲食業者は、地元の法令や規制に従う責任があります。
グリーストラップの設置方法
- プロの専門家のコンサルティング:
- グリーストラップの設置には専門知識と技術が必要です。プロの設備業者や配管業者にコンサルティングを依頼し、最適な設置方法を検討しましょう。
- 適切な場所の選定:
- グリーストラップは飲食施設の排水系統に設置されます。キッチンや食品調理エリアの近くに設置されることが一般的です。
- サイズとタイプの選定:
- グリーストラップのサイズとタイプは、施設の規模と使用量に合わせて選ばれるべきです。大規模な飲食施設は、大容量のグリーストラップを必要とします。
- 定期的なメンテナンス:
- グリーストラップは定期的なメンテナンスが不可欠です。油脂や固形物の蓄積を定期的に取り除き、トラップの効果を維持します。
- 法令遵守:
- グリーストラップの設置とメンテナンスに関する法令や規制を遵守しましょう。定期的な監査や検査が行われることもあるため、法令順守は重要です。
地域や国によって異なる法令が存在するため、具体的な情報を得るためには地元の規制機関や専門家と連絡を取ることが必要です。グリーストラップの適切な設置とメンテナンスは、環境保護と食品業界の衛生維持に貢献する重要な措置です。
飲食店にはグリストラップの設置義務があるのか
飲食店を開業や経営を行う上で、必ず考慮しなければならない問題が「油や汚染水の処理方法」。
油や汚染水の染処理方法として、効果的であると言われるグリストラップですが、設置義務や設置基準を知らない方も多いのではないのでしょうか?
飲食店には、グリストラップの設置義務が明確にあるわけではありません。
法律を確認してみても、明確に義務化しているものはなくグレーゾーンともいえます。
しかし、これから紹介する2つの法令によって排水基準は定められています。
- 建築基準法
- 下水道法(水質汚濁防止法)
多くの飲食店は、上記の法令内にある排水基準を満たすために、グリストラップを設置している場合が多いです。それぞれの法令を詳しく見ていきましょう。
建築基準法
建築基準法第129条では、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる排水のための設備を設けると記載しています。
また建築基準法内の「建設省告示第1597号」では、「汚水が油脂、ガソリン、土砂その他排水のための配管設備の機能を著しく妨げ、又は排水のための配管設備を損傷するおそれがある物を含む場合においては、有効な位置に阻集器を設ける」と記載されています。
数値などは明確にされていませんが、飲食店経営は配管設備を損傷する恐れがあるため、阻集器を設けた方が良いでしょう。
下水道法(水質汚濁防止法)
下水道法と水質汚濁防止法では、排水の水質基準や店舗の床面積などが定められており、以下の基準となります。
- 水素イオン濃度:5~9pH
- BOD(生物化学的酸素要求量):1リットルあたり600mg未満
- ノルマルヘキサン抽出物質(動植物油脂含有量):1リットルあたり30mg未満。
- 飲食店の規模:床面積420㎡以上
上記の基準を満たしておかなければ、水質の改善や排水の停止の指導、罰則などがあるため排水基準については確認しておきましょう。
設置基準は自治体の設置基準を確認する
法律ではグリストラップの設置基準は明確にありませんでした。
しかし、自治体によっては設置基準や設置義務が設けられている場合があります。
例として、名古屋市では以下のように回答しています。
- 「飲食店やガソリンスタンド等における汚水のように、油脂、ガソリン、土砂その他排水管を損傷する恐れのある物質を含む汚水を下水道に排水する場合は、建築基準法施行令により阻集器を設けなければならないとされています。」
- 「名古屋市では設置するグリース阻集器の容量等に関する基準はありませんが、排水設備工事の申請に際しては阻集器の構造図と選定に係る容量算出書を添付していただき、確認を行っております。また、グリース阻集器の選定に関しては、空気調和・衛生工学会規格「グリース阻集器(SHASE-S217-2016)」を参考にすることができます。」
また「市民の健康と安全を確保する環境の保全に関する条例」でも水質汚染についての規定があるため、各自治体の設置基準を確認しておくと良いでしょう。
参照:名古屋市上下水道局の設置基準|市民の健康と安全を確保する環境の保全に関する条例
そもそもグリストラップとはどういうもの?
グリストラップとは、飲食店の厨房からの排水をそのまま下水に流さないように「油分と水分を分離する働き」をするものです。
排水をそのまま下水に流すと環境汚染につながるため、油脂分やゴミをグリストップ内に留めておきます。
そうすることで、排水基準値に違反することなく健全に排水処理をする働きをしています。
構造
グリストラップの構造を見ていくと、それぞれ異なった役割を担う3槽に分けられています。
まず1つ目の槽では、残飯や生ゴミなどが流れていかないように網目状のバスケットが設けられているのが特徴です。
バスケットの網目から抜けてしまった細かいゴミなどは、その先にある仕切りによって流れていかないように作られています。
2つ目の槽においては、油脂と水を分けるという役割があります。仕切り板で水を滞留させることによって、浮く性質を持つ油分と水とに分離させやすい構造です。
3つ目の槽では、ここまでの段階で取り除けなかった油分をさらに水から分離させる役割を担っています。
この3つの段階の工程で、極力ゴミや油脂がない状態で排水されていきます。
グリストラップの清掃の際に困らないためにも、どのような構造なのか把握しておきましょう。
価格
グリストラップを導入するには「どのくらいの価格なのか」確認することも重要なポイントです。
まずグリストラップは、調理する料理の種類や店舗の規模によってグリストラップのサイズが決まります。
自分の店舗にどのくらいのサイズのグリストラップが必要なのか、チェックしましょう。
また立地によっては、設置できるタイプも異なります。
グリストラップは、素材や種類などによって価格に幅があるのが特徴です。また、清掃やメンテナンスなどのランニングコストも導入前に試算しておくとよいでしょう。
本体価格はサイズやタイプにもよりますが、約5万~20万円します。
高いものでは設置込みで80万~120万円するグリストラップもあるため、開業する飲食店に適したタイプを検討しましょう。
使い方
グリストラップの正しい使い方を理解することが、問題なく使い続ける大事なポイントです。
正しい使い方を把握していないと、長く効果的に使用していくことが難しくなります。
グリストラップを導入したら、最初に正しい使い方を把握するようにしましょう。
正しい使い方のひとつとして、定期的に清掃があります。
定期的に清掃することを意識していかないと、悪臭や害虫、排水管のつまりなど大きな問題へとつながります。また粗悪に扱った結果として、営業を止めることにもなりかねません。
修理代や店内の消毒、営業停止による無収入など経済的な負担にもなります。
グリストラップを正しく使って、リスクを回避しましょう。
注目記事:飲食店のダクト清掃のやり方!実はとても重要!火災になる危険!!!
グリストラップを清掃するポイント
グリストラップを設置すると、清掃や管理のコストがかかります。
グリストラップは、多くのゴミや油を取り除くため、きれいな水を排水してくれます。
しかし、こまめな清掃を怠るとバスケットやグリストラップ本体に汚れが溜まり、飲食店経営の衛生面に良くありません。
害虫の侵入も防げるので掃除は必須です。
そのため、グリストラップ内の清掃や管理を行う必要があります。
もし、清掃や管理を自分でしたくない場合は、グリストラップ専門の清掃業者にお願いしましょう。
費用はかかるものの、清掃コストを削減でき、質の高い清掃や管理を提供してくれます。
グリストラップを導入している飲食店では、定期的に清掃を行うことが大切です。
清掃を怠ると、悪臭や害虫の発生により店内の衛生環境が悪化してしまいます。
清掃方法を知らず、気が付かない間にグリストラップにゴミが溜まっていることもあるかもしれません。
以下で、飲食店のグリストラップ清掃のポイントを解説します。
それぞれのポイントをもとに、定期的な清掃を行いましょう。
バスケットの清掃を行う
バスケットの清掃は毎日行います。
残飯や野菜クズといった生ゴミが溜まる部分なので、放置すると排水が詰まりやすくなります。
グリストラップの中でもゴミが溜まりやすいところであるため、バスケットが一杯になる前に処理しなければなりません。
バスケット内に溜まったゴミを処理することは簡単です。
バスケットを取り出して、中に溜まったゴミを燃えるゴミと一緒に処理します。
毎日清掃することが大変だと感じる方は、負担を減らすためのアイテムを活用してみてもよいでしょう。
グリストラップ専用のネットをバスケットに被せてからゴミが溜まるようにすれば、簡単にゴミを処理できます。
水切れがよく、細かいゴミまでキャッチできるお役立ちアイテムです。
表面の油脂を取り除く
グリストラップの第二槽目では表面に油脂が浮いてきます。
表面に浮いている油脂は2〜3日に1回の頻度で清掃するとよいでしょう。
油脂を除去する際は、柄杓やストレーナーを使用することをおすすめします。
しかし、このような器具を用いても面倒に感じる人もいるかもしれません。
油脂の清掃におすすめのアイテムとして、グリストラップ用の吸着マットという商品もあります。
吸着マットは、水面に浮かべておくだけで油脂を吸着してくれるアイテムです。
グリースクリーンの素材が油脂を吸着するものになっているため、特に力やコツは必要なく、水面に浮かべておくだけで処理できます。
グリストラップの清掃は手間がかかる作業であるため、このように効率的に作業を進められるアイテムを使用することがポイントです。
スタッフの負担も軽減できるおすすめのアイテムなので、気になる方は検討してみましょう。
底の沈殿物を取り除く
2〜3日に1回は、グリストラップの底に溜まった沈殿物を取り除くことが必要です。
底の部分は、一見ゴミがあるように見えないこともあります。
そのため、清掃をしないまま放置する方もいますが、どんどん蓄積していきグリストラップ本来の機能が失われてしまいます。
底に沈んでいる汚泥を除去することは大変な作業です。
軽いゴミではないため、すくい上げるときに腰に負担がかかります。
自分たちの力ですくい上げようとしてケガをしてしまってはいけません。
底に溜まった汚泥を除去するためには、柄の長いすくうアイテムを使用してみるとよいでしょう。
角に溜まった汚泥も取りやすい設計になっているので、腰への負担も減らせます。
約2メートルの柄があるため、腰に負担をかけずに楽な姿勢で清掃できることが魅力的なポイントです。
トラップ内部を洗浄する
2~3ヵ月に1回は、トラップ内部を洗浄しましょう。
第一槽、第二槽でろ過した排水が、第三槽目にあるトラップ管に流れ込みます。
そこに流れ込む時点で、排水はある程度キレイになっていますが、清掃しないと油汚れが溜まります。
蓋が付いている場合は、蓋を取り外して清掃しましょう。
柄の長いブラシを使うと簡単にできます。
特殊な使い方をしていない限り頻繁に清掃する必要ありませんが、清掃をしない期間が長くなると汚れで詰まる原因になります。
清掃頻度に注意しましょう。
消臭する
グリストラップの清掃後は消臭も行うことがポイントです。
グリストラップの蓋をあけると、空間に悪臭が発生します。
窓を開けて換気をすることも効果的ですが、それだけでは足りないこともあります。お客様の席まで臭いが流れてしまっては経営上危険です。
清掃の際は消臭剤も使用するようにしましょう。
専用の消臭剤を使うと、臭いのもとから悪臭を予防できます。消臭剤の香りは、混じって不快になる場合もあるため無香料で無香料がおすすめです。
グリストラップの清掃を行うときは、清掃するためのアイテムだけを用意しがちですが、悪臭対応として消臭剤も用意するようにしましょう。
まとめ
飲食店には、グリストラップの設置義務が明確にあるわけではありません。
法律を確認してみても、明確に義務化しているものはなくグレーゾーンともいえます。
法律ではグリストラップの設置基準は明確にありませんでした。
しかし、自治体によっては設置基準や設置義務が設けられている場合があります。
グリストラップの清掃のポイントは、こまめに清掃すると良いでしょう。
生ごみや油汚れを長期間放置していると、汚れが落ちにくくなり悪臭も強くなります。
清掃を簡単にするために、「グリストラップ用の水切りネット」や「グリースクリーン」などの活用をおすすめします。
市販でも売っているため、誰でも購入しやすいです。
それでもグリストラップの清掃ができない場合は、グリストラップ専門の清掃業者に依頼しましょう。