これから飲食店などの店舗を開業しようと悩んでいる方は、店舗契約にかかるお金やその他の経費をかけたくはないですよね?
そこで、一つの考え方として、店舗兼住宅という考え方もあります。
それは住居を立てる際に、同じ敷地に店舗も構えてしまうという考え方です。
果たしてこれにはデメリットとメリットはどうななのでしょうか?
そして、ローンは住宅ローンで対応できるのか?
その辺りを今回の記事ではわかりやすく解説しています。
私は飲食業界に30年携わってきて、色々なオーナーさんの元、飲食店の立ち上げ・立て直しをしてきました。
だからこそわかる細かなところを今回はまとめましたので、ぜひ参考に使ってください。
この記事を読むと、
お店を開きたいけれど、テナントは家賃の支払いが心配だし、ランニングコストも気になる。
店舗付き住宅は経費を削減でき、家事や育児との両立もしやすいメリットがありますが、立地や建築費など気がかり
これらを解決いたします。
まずは店舗兼住宅を建てることによって得られるメリットをご紹介します。
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店舗兼住宅のデメリット&メリット
店舗兼住宅を所有することには、いくつかのメリットとデメリットがあります。以下に、店舗兼住宅の主なメリットとデメリットを示します。
メリット:
- 経済的利点:
- 住宅と店舗を一つの建物で兼ねることで、不効率な家賃や賃貸費用を削減できる可能性があります。特に小規模な事業や新興企業にとってはコスト節約の利点があります。
- 便利性:
- 住宅と事業場が同じ場所にあるため、通勤の必要がなくなり、時間と労力を節約できます。また、緊急の事態にも迅速に対応できます。
- 税制上の優遇:
- 一部の地域では、店舗兼住宅に対して特別な税制上の優遇措置がある場合があります。これにより、税金の節約が期待できます。
- 事業へのプレゼンス:
- 事業を経営する場所に住んでいるため、事業に対するプレゼンスを維持しやすく、日常的な監督や管理が容易です。
デメリット:
- 生活と仕事のバランス:
- 店舗兼住宅を所有することは、生活と仕事の境界線がぼやける可能性があります。休息と仕事のバランスを取ることが難しい場合があります。
- 地域規制と制約:
- 地域や都市によっては、店舗兼住宅を所有するために特定の規制や許可が必要な場合があります。また、住宅地域に事業を営むことに対する制約もあるかもしれません。
- セキュリティとプライバシー:
- 住宅兼事業場に住んでいる場合、セキュリティとプライバシーに関する懸念が生じることがあります。店舗の来客や顧客のプライバシーを守るために、追加のセキュリティ対策が必要かもしれません。
- 商業用途に適していない場合:
- 住宅の間取りや設備が、特定の商業用途に適さない場合があります。事業展開に適した環境を整えるために改築や設備投資が必要になることがあります。
- 売却時の制約:
- 店舗兼住宅を売却する際、購入者を見つけるのが難しい場合があるかもしれません。また、地域の需要や不動産市場の状況によって、売却価格に制約が生じることがあります。
店舗兼住宅を所有することは、独自の利点と課題を伴います。事業と生活の両方に関心を持ち、地域の規制を理解し、適切なプライバシーとセキュリティ対策を講じることが、成功の鍵となります。
どれもこれも魅力的!7つのメリット
店舗付き住宅のメリットは次の7つです。
- 家賃無しで店を持てる
- 通勤時間ゼロで仕事できる
- 低金利の住宅ローンを利用できる場合がある
- 建築費の一部を経費に計上して節税できる
- 住宅部分はローン減税が受けられる
- 固定資産税、都市計画税の優遇が受けられる
- 貸すこともできる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
【メリット1】家賃無しでお店を持てる
お店を経営する上で、大きな負担となるのが家賃です。
でも、自分の家に店舗を併設すれば、家賃無しでお店を構えることができます。
貸店舗を借りる場合には、家賃の負担だけでなく、契約時にまとまった保証金等も必要となりますが、これらの費用をかけずに開業できることで余裕を持って経営できます。
もちろん店舗付き住宅の建築費は必要になりますが、店の家賃と自宅の家賃を二重に支払うよりも、ローンを支払ったほうが安く済むケースがほとんどです。
【メリット2】通勤時間ゼロで仕事ができる
自分の家に店舗を併設すれば、通勤時間のロスがありません。
通勤時間がなくなることで、不要なストレスもなくなり、プライベートに費やす時間を増やすことができます。
店舗付き住宅は、子育てや介護との両立にも向いています。
【メリット3】低金利の住宅ローンを利用できる
金融機関によっても違いますが、店舗付き住宅の全体について、金利の低い住宅ローンを利用できる可能性があります。
「建物の床面積の50%以上が住宅の場合に住宅ローンが使える」という条件がある場合がほとんどですので、金融機関に確認してみましょう。
金融機関によっては、住宅部分は住宅ローン、店舗部分は事業用ローン、という2本立ての融資になり、その場合には事業用ローンの金利は住宅ローンよりも高めになります。
融資については複数の金融機関で相談して、条件を比較することが大切です。
【メリット4】建築費の一部を経費に計上して節税できる
「店舗付き住宅で店を経営したら、家賃を経費に計上できないから節税できないのかな?」と思うかもしれませんが、店舗付き住宅の建築費のうち、店舗に相当する部分は減価償却費として毎年計上することができます。
減価償却費は、資産の価値が毎年少しずつ減っていくものとみなして、費用計上することです。
それに加えて、店舗部分に相当するローンの利息も費用に含めることができます。
【メリット5】住宅部分はローン減税が受けられる
店舗付き住宅について住宅ローンを借り入れた場合、住宅部分の割合に応じて「住宅借入金等特別控除(ローン減税・ローン控除)」を受けることができます。
「ローン減税」とは、借入金の償還期間が10年以上であるなどの一定の要件を満たせば、所得税の還付を受けられる制度です。
店舗付き住宅でも、マイホームを持つ人を支えるお得な制度をしっかり利用できます。
ただし、ローン減税は店舗付き住宅の床面積の50%以上が自宅の場合にしか使えませんので、注意が必要です。
参考:国税庁ホームページ
【メリット6】固定資産税、都市計画税の優遇が受けられる
土地や建物には、毎年固定資産税や都市計画税が課税されますが、住宅の敷地については特例措置があります。
住宅の敷地のうち200平米までの部分(小規模住宅用地)は、建物が建っていない土地と比べて固定資産税が6分の1、都市計画税が3分の1に軽減されます。
店舗付き住宅の場合にも、市区町村が定めた一定の要件を満たせば、税率軽減を受けることが可能です。
参考:東京都主税局ホームページ
【メリット7】貸すこともできる
もし何らかの事情で店舗の経営をやめたとしても、店舗部分は人に貸すことができます。
その際、一般的に、同じ地域のアパート賃料相場に比べて、貸店舗の賃料相場は1坪あたりの単価を高く設定できるので有利です。
ある程度の年齢までは自分の店を経営し、老後は引退して店舗部分の家賃収入を得る・・・そんなライフスタイルも可能となります。
あらかじめ気をつけておきたい5つのデメリット
店舗付き住宅のデメリットは次の5つです。
- 普通の一戸建てよりも売りにくい可能性がある
- 自分が店をやめたらどうするか考えておかないと困る
- 建築費が一般住宅よりも割高になる可能性がある
- 集客率は立地で大きく左右される
- 近隣への配慮が必須
あらかじめ知っておけばリスク回避にもつながりますので、しっかりと確認しておきましょう。
【デメリット1】一般住宅よりも売りにくい
売却したいと思った場合、普通の一戸建てと比べると、店舗付き住宅は需要者が限られるので売却に時間がかかる可能性があります。
ただし、集客性のある立地ならば、店舗付き住宅の需要はありますので、商売に向いた立地で店舗付き住宅を建築する場合にはそれほど心配はいりません。
【デメリット2】店を閉める際に空き部屋になる
自分がお店をやめたくなった場合や、お店が大繁盛して別の場所に拡張移転することになったら、店舗部分が空いてしまいますね。
そうなったら、店舗付き住宅全体を売却して一般住宅に住み替えるか、住み替えないで店舗部分だけを人に貸すという選択肢となります。
いずれの場合も、集客力のある立地で店舗付き住宅を建築すれば、売却も可能ですし、貸店舗として借り手を募集するのもスムーズです。
隠れ家的な立地でも業種によっては経営可能かもしれませんが、将来売ったり貸したりする可能性を考えると、一般的には店舗需要の多い立地を選んで建てるのが安心です。
【デメリット3】建築費が一般住宅よりも割高
店舗付き住宅の建築費は、店舗の内装や設備にどれくらい投資するかによっても違いますが、一般住宅よりも高くなるのが一般的です。
ただし、貸店舗にする場合、オーナーは内装を施工しない「スケルトン」状態にすれば、店舗の借主が費用負担することになるので、建築費が割高になるとは限りません。
ちなみに、店舗付き住宅のローンの借り入れ審査は、普通の住宅ローンのように年収や勤続年数などの属性情報だけが考慮されるのではなく、これから始める事業の収支や土地の担保価値も考慮されます。
そのため、しっかりとした事業計画を立てて金融機関に提出する必要があるので、収支計画書の作成についても建築を依頼するハウスメーカーに相談することをおすすめします。
【デメリット4】集客率は立地で大きく左右される
立地の悪い場所に店舗兼住宅を建ててしまうと、集客率が悪く、繁盛しにくくなります。
その結果、経営がうまくいかなくなる可能性があります。
店舗兼住居の建物の場合、どちらを重視するのか、バランスが立地に影響します。
住宅街に建てれば人が集まりにくく、交通量が多い場所では、騒音など、暮らしにくくなります。
そのため、できるだけバランスが良い立地を選んで建物を建てることが理想だといえます。
しかし、立地の良い場所、駅前や駅から近い場所は土地代も高くなっています。
そこに建物を建てるとなると土地の費用で高額を支払うことになるため、初期費用をあまり用意できない人には難しいかもしれません。
駅前など立地が良すぎる場所を無理して選ぶ必要はありませんが、できるだけ利便性に優れた場所を探すことがおすすめです。
いくつもの場所を回って利便性が良く、土地代が高すぎない場所を探しましょう。
【デメリット5】近隣への配慮が必須
周りが店舗ばかりだという場合はあまり気にしなくてもいいのですが、住宅街に建てる場合は近隣への配所が必須です。
例えば飲食店を経営する場合、夜はお酒を提供する店だとどうしてもお客さん同士が大きな声で話してしまいがちです。
声が大きくなればなるほど近隣に響く可能性が高くなりますので、騒音として苦情が入ることもあります。
また美容院やネイルサロンでも、駐車場がない場合は注意が必要です。
お客さんが車で来たものの駐車場がなく、路上駐車をしてしまうと通報されるかもしれません。
最悪の場合は駐禁切符を切られてしまう可能性もあるため、お客さんにも迷惑がかかってしまいます。
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店舗兼住宅を建てるときの注意点
店舗兼住宅は経営をする人からすればとても便利な建物ですが、建築のときには必ず注意しておきたいポイントがあります。
土地規制の対象ではないかを確認
日本全国の土地には用途規制というものがあります。
土地別に建物を建てて良い場所、建物を建ててはダメな場所が決められているため、まずは自身が所有、または購入を考えている土地にどんな規制があるかを確認することが大切です。
住宅街に店舗兼住宅を建てることもできますが、その場合、土地が「第1種低層住居専用地域」か「第2種低層住居専用地域」のどちらかによります。
第1種低層住居専用地域であれば一定の制限内での開業が可能となっていますが、第2種低層住居専用地域の場合は2階以下で広さが150m²以下でなければならないなどの規制があります。
要件を満たしていれば特に問題ありませんが、場合によっては建築できないものと思っておきましょう。
高い集客率が期待できる立地かを調査する
店舗兼住宅を建築できる土地だったとしても、そこが立地の悪い場所だと意味がありません。
例えば、駅から遠く駐車場が用意できない場所となるとお客さんの来店方法が限られます。
その結果、集客率が下がり、経営に悪影響を及ぼす可能性が高くなります。
気になる土地を見つけたらまずはその土地の周辺を調べてみましょう。
駅から近く住みやすい場所がベストですが、そうではない場所しか見つからないこともあります。
その場合は店舗メインで考えるのでれば、駐車場が用意できる土地かどうかをチェックしましょう。
お店の前に駐車場が用意できない場合は、お店用の駐車場として借りられる土地があるかも確認しておきましょう。
手軽に来店できる方法があれば駅から遠くてもお客さんが来る可能性は十分ありますので、購入前に土地周辺を調査しておきましょう。
店舗兼住宅を建てた実績が豊富なハウスメーカーに依頼する
店舗兼住宅を建てるとなると、住宅施工が得意なメーカーに依頼してしまうかと思います。
しかし店舗兼住宅は住宅だけでなく店舗の建設も兼ねているため、住宅施工が得意なだけでは理想通りの建築結果になるとも限りません。
店舗兼住宅を建てるなら店舗兼住宅の施工実績が豊富なハウスメーカーに依頼しましょう。
実績があるメーカーは建築経験が豊富なので、住宅部分も店舗部分も理想通りに仕上げてくれます。
実績数が多いほど安心してお任せできるため、メーカーを選ぶときは店舗兼住宅の建築実績が多いかどうかを確認しておきましょう。
もし実績数を見るだけでは不安という方は、そのメーカーに実際に建築した場所の写真を見せてもらうことでどんな建物を建築してきたかを見て確認できます。
店舗付き住宅新築の流れ
店舗付き住宅の新築は、計画から引き渡しまで、基本的には、戸建て住宅の新築と同じようなスケジュールで進んでいきます。
ここからは、具体的な流れを見ていきましょう。
計画
まずは、プランの提案を依頼するハウスメーカーをピックアップします。この時点で1社に絞る必要はありません。
(1)現地調査・ヒアリング
ハウスメーカーの担当者が敷地の状況を確認するとともに、オーナーの資金や要望、事業のコンセプトについてヒアリングを行います。
(2)プランニング
ヒアリングした内容に従い、ハウスメーカーでプランを作成します。
(3)プレゼンテーション
プランの提案と概算金額の提示が行われます。プラン図のほか、パースやスケッチ、模型など、各社さまざまな手法でプレゼンテーションが行われます。
(4)依頼先の決定
各社のプラン内容と概算金額を比較検討し、店舗付き住宅の新築工事を依頼するハウスメーカーを決定します。
設計
新築工事の依頼先を1社に絞ったところで、詳細設計に入ります。
飲食店など営業許可を要する業種の場合、定められた施設基準を満たす必要があるため、このタイミングで保健所への事前相談を行います。
(1)詳細打ち合わせ
提案されたプランをもとに、使用する内外装仕上げ材や設備機器など細かく仕様を決めていきます。
(2)実施設計
建物のコンセプトを決める基本設計に対し、工事に必要な図面を作成することを実施設計といいます。詳細打ち合わせで決定した内容も、すべて盛り込まれます。
(3)工事請負契約
完成した設計図の内容と、それに基づく費用の金額に双方合意をしたところで、工事請負契約を締結します。
着工(竣工まで6ヶ月前後)
地縄を張り、地鎮祭を行ってから着工となります。
古家が建っている場合は、地鎮祭の前に解体工事を行います。
近隣への挨拶は、昨今ではハウスメーカーの担当者が単独で行うことも増えています。
しかし、店舗付き住宅の場合、先々のことも考えてオーナーもできるだけ顔を出すようにしたほうが無難でしょう。
(1)地盤調査
基礎工事の前に地盤調査を実施し、調査結果に応じて地盤改良工事を行います。
(2)建築本体工事
基礎工事からスタートし、躯体(骨組み)部分が完成したら外装工事、内装工事の順に進んでいきます。
(3)設備工事
電気の配線工事や給排水衛生設備・空調設備の配管工事、設備機器の設置工事などを行います。
(4)什器の搬入
設備工事が終わり、内装が完成したら、店舗内へ什器を搬入します。
(5)外構工事
庭やエクステリア、アプローチを仕上げていきます。
(6)竣工
完了検査、施主検査をへて、引き渡しとなります。
オーナーは竣工引き渡しに向けて、営業許可の申請や宣伝広告など開業の準備を進めていきます。
店舗付き住宅の新築にかかる費用
例えば飲食店用の店舗を新築で建てる場合、50坪の広さであれば、建築費用は2,200〜2,300万円が相場となります。
戸建住宅の場合と違って、店舗は業種によって必要な設備や什器の種類や数もまったく異なるため、建築費用の相場には業種ごとのバラツキがあります。
例えば、アパレルショップや雑貨店などの販売系の場合、ハンガーラックやディスプレー用の棚があれば営業できるため、大がかりな設備は必要なく、その分、工事費も安くあがります。
しかし、美容院や飲食店の場合は設備工事に費用がかかるため、工事費が高くなりがちです。
また、同じ飲食店でもカフェと本格的なレストランでは必要な設備は異なります。
さらに、同じ業種でも内装や造作にどこまでこだわるかによって100万円単位で費用に差が出ます。
まずは建物全体の予算を決め、ある程度の要望を伝えた上で、その予算額に応じた店舗付き住宅をハウスメーカー側から提案してもらうとよいでしょう。
まとめ
店舗兼住宅を建築すればお店の経営も居住もひとつの建物で済ませられます。通勤の手間がなく家賃も不要なので経営者にとってはメリットが多いと言えます。
いくつかのデメリットもありますが、メリットの方が大きいと感じるのであれば単独店舗ではなく店舗兼住宅を建築することがおすすめです。
建築する際は店舗兼住宅の建築実績のあるメーカーに依頼しましょう。
実績の少ないメーカーだと建築後に後悔してしまうかもしれませんが、実績のあるメーカーなら施工結果に満足できる可能性が高くなります。
お店を経営していく場所なので、後悔のないよう依頼するメーカーを慎重に選びましょう。