飲食店のオーナーさん・店長さんは自店が閉店する際にどのような手順で進めていけばいいかわからないでいませんか?
廃業するわけですからできるだけ負債にならないようにしなければ、これからの再出発に支障をきたします。
そこで、今回の記事では、
私は飲食業界に30年携わってきて、色々なオーナーさんの元、飲食店の立ち上げ・立て直しをしてきました。
当然、閉店した経験もあります。
だからこそわかる細かなところを今回はまとめましたので、ぜひ参考に使ってください。
それでは、私と一緒に後悔しないための閉店の方法を見ていきましょう。
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店舗閉店でやること・お知らせ・届出・気をつけるべきポイント
店舗を閉店する際には、以下のステップとポイントに注意することが重要です。なお、地域や国によって規制や手続きが異なるため、所在地の法的要件に従って行動することが必要です。
- 閉店の決定とスケジュールの設定:
- 閉店の決定をしたら、閉店日やスケジュールを設定します。顧客や従業員に事前に告知するための充分な時間を確保しましょう。
- 従業員への通知と対応:
- 従業員に閉店の決定を通知し、退職手続きや給与の支払い、福祉などの対応を行います。従業員の権利を守るために法的要件に従うことが重要です。
- 在庫と備品の処分:
- 未使用の在庫や備品を売却、寄付、廃棄、返品などの方法で処理します。食品や飲料品の場合、安全な方法で廃棄しましょう。
- 賃貸契約の解約:
- 店舗の賃貸契約がある場合、契約条件に基づいて解約手続きを行います。契約期間や通知期間を確認し、不動産オーナーや賃貸業者に連絡します。
- 税金と財務手続き:
- 閉店に伴う税金や財務手続きを完了します。未払いの税金や請求書を整理し、税務署や税務アドバイザーと連絡を取りましょう。
- 顧客への通知:
- 閉店を予告するお知らせをウェブサイト、ソーシャルメディア、店内掲示物、メール、および店内で掲示します。また、顧客にロイヤルティーポイントの交換などの特典を提供することも検討しましょう。
- 許可と届出:
- 閉店に関連する届出や許可の手続きを行います。営業停止の通知や商業登記の変更など、必要な手続きを確認します。
- サプライヤーとの連絡:
- 閉店に関するサプライヤーとの連絡を取りましょう。未払いの請求書や供給契約に関する問題を解決します。
- 安全とセキュリティ:
- 閉店後も店舗の安全とセキュリティを確保しましょう。盗難や不正アクセスを防ぐために、適切な対策を講じます。
- 法的コンサルティング:
- 閉店に関連する法的問題がある場合、法律家や法的アドバイザーの助言を受けることが役立ちます。
閉店はビジネスオーナーにとって大きな決断です。すべての手続きを適切に行い、従業員や顧客、関係者に対する誠実なコミュニケーションを大切にすることが、閉店プロセスを円滑に進めるポイントです。
閉店告知のタイミングは?
お客様への告知は、閉店の1~2ヵ月前に行うのが一般的です。
このくらい猶予があれば、ボトルキープしているお客様もお酒を飲みきれるでしょう。
また閉店イベントを開催するにも、ベストなタイミングです。
店頭の貼り紙、ホームページ、SNSなどで、お客様へ閉店のお知らせと感謝の気持ちを伝えましょう。
閉店の告知のテンプレはこちらです。⬇️
拝啓 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 さて、突然ではございますが、諸般の事情により○月○日をもちまして〇〇を閉店する運びとなりました。 長きにわたるご支援に心より感謝申し上げますとともに、ご迷惑をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。 皆様のますますのご健勝とご発展を心よりお祈り申し上げます。
閉店セールを行う場合のテンプレはこちらです。⬇️
さて、誠に勝手ながら〇〇店は平成〇年〇月〇日をもちまして閉店させて頂くことになりました。 これまでのご愛顧に厚くお礼申しあげます。 つきましては、〇月〇日から〇〇日までの〇〇日間、「閉店セール」を開催いたします。 期間中は全商品〇〇割引でご提供させていただきます。
閉店するにも費用がかかる?
退去までの家賃や光熱費、店内備品の処分費用など、店舗の閉店には開店時と同様多くの費用が発生することが分かります。
中でも特に負担となるのが、原状回復費用です。
原状回復の範囲は契約内容によって異なりますが、スケルトンの状態にまで戻すのが一般的です。借りた時の状態が居抜きでも、賃貸借契約書には「退去時スケルトン戻し」と定められていることが多くあります。
スケルトン工事の費用は、使用状況や内装の状態、路面店舗なのか空中店舗なのか等、条件によって異なりますが、坪10万円以上とも言われます。
そこで、閉店費用節約のために活用したいのが、居抜きでの店舗売却です。
居抜き物件として店舗を売却するには?
では、居抜きで店舗をできるだけ高く売却するためには、どんなことに気を付ければ良いのでしょうか。
ポイントをいくつかご紹介します。
店舗内の各種設備を点検しておく
店舗の売却・造作譲渡で一番重要なのが、店舗設備の状態です。
売買金額に直接的に大きく影響します。
譲渡額の交渉を有利に進めるためにも、後々のトラブル回避のためにも、故障している機器はないか、電気が切れていないかなど、点検しておくようにしましょう。
また、エアコンや電気設備などで貸主が所有しているものがあれば、当然それらは譲渡の対象になりません。
どちらが所有しているのか曖昧なものがある場合は、事前に確認しておくようにしましょう。
店舗は清潔に保つ
店内が綺麗であるほど、買取希望者に良い印象を与えることができます。
店内の壁、床、窓ガラスなどはもちろん、厨房設備やトイレなど特に汚れが目立つ部分は、普段から念入りに清掃しておくことをおすすめします。
また、倉庫などに放置されているゴミがないかもチェックしましょう。
見学希望には速やかに対応する
まずは買取希望者に店舗を内見していただかなければ話が進みません。
できるだけ早く見ていただけるよう、見学の希望があればいつでも対応できるよう努めてください。
また、内見に立ち会う際には、自身の印象にも配慮しましょう。
リース対象物とリース残高を把握しておく
厨房機器などでリースしているものがあれば、それらのリース残高とリースの満了期間について整理しておきましょう。
買主にリース契約ごと継承するという方法もありますが、売主が連帯保証人にならなければならない場合があります。
トラブル回避のためにも、リース料金の残額を支払い、買い取った上で引き継ぐのが良いでしょう。
ただし、リース会社や対象物によっては買い取り自体ができない場合もあるので注意しましょう。
解約予告前に譲渡先を探す
解約を通知すると、大家や不動産会社などの貸主は、次テナントの募集を開始します。
賃貸借契約書に原状回復義務の記載がある場合、次の募集はスケルトン渡しで行われます。
貸し主側で次テナントが決まると、当然居抜きでの引き渡しはできません。
居抜きでの譲渡先を探す場合は、焦って判断を誤らないためにも、解約予告を行う前から始めるのが良いでしょう。
飲食店閉店のチェックリスト7つ!
まずは店舗を閉店させるまでにやるべき7つのことをご紹介します。閉店が決まったら以下の7つの手続きを済ませましょう。
1-1.店舗物件の解約
閉店が決まったら、店舗物件の解約を済ませましょう。
例え営業を終了しても、物件の解約日までは家賃を支払い続ける義務があります。
賃貸借契約書には通常「退去する○ヵ月前までに申請を~」といった解約予告期間に関する記述がありますので、記述に沿って管理元である不動産会社や大家へ解約通知を書面で行いましょう。
1-2.従業員への解雇通知
従業員を雇っている場合は、閉店の30日以上前までに解雇を通知する必要があります。
解雇予告期間が30日に満たない場合には“解雇予告手当”の支払い義務が生じるので注意しましょう。
1-3.取引先への閉店通知
お世話になっていた取引先への閉店通知も忘れずに行いましょう。
閉店後に品物が届かないよう食材や備品等を仕入れている業者はもちろん、常連のお客様にも閉店することをお知らせしておくとベターです。
1-4.電気・ガス・水道などの解約
物件だけでなく、電気・ガス・水道などライフラインの解約も忘れないよう注意。
住居の引っ越しと同じように、店舗物件を解約する際も、電気・ガス・水道などは解約する必要があります。利用停止日の何日前までに手続きしなければならないのか、各所に確認しておきましょう。
1-5.店内の備品を処分する
店内にある備品(家具や厨房機器、食器等)などの備品を退去前にあらかじめ処分しておくことも忘れずに。
物によってはリサイクル業者が買取ってくれる場合もあるので、処分する前に買い取りが可能か問い合わせてみるのも手段の一つです。
1-6.解体
契約内容にもよりますが、店舗物件を引き渡す際には“スケルトン工事(原状回復工事)”を行って返すか、“居抜き”で返すかのどちらかがほとんどです。
“スケルトン工事(原状回復工事)”は物件を入居前の状態に戻す工事のこと。
内装を全て解体しなければならないため、解体業者などへ依頼する必要があります。
“居抜き”は、そのままの状態で返すこと。しかし、「設備はそのままで、什器は処分する」というパターンと、「設備も什器もそのままの状態で返す」パターンがあるので、契約内容をよく確認しておきましょう。
1-7.各種届け出
店舗を閉店した後にもやらなければならないことがあります。
それは、警察署や保健所、消防署、税務署などへの各種届け出。
例えば従業員を雇っていたのであれば各種保険・年金の手続きや、税金の申告が必要となります。
業種によって必要な届け出は異なるので、どんな届け出が必要か閉店前に確認しておきましょう。
ちなみに多くの場合、各種届け出は閉店日から5~50日以内に手続きを行わなければなりません。
閉店後に慌てて準備するのではなく、あらかじめ準備を進めておきましょう。
保健所
「廃業届」の提出
「飲食店営業許可証」の返納
税務署
「個人事業の廃業届」の提出
「給与支払事務所等の廃止届出書」の提出
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」の提出
「消費税の事業廃止届」の提出
おさらい:閉店のための手続きの流れ
それでは、閉店するために必要な手続きも簡単におさらいして見ておきましょう。
これは、個人事業主の場合です。
また、時系列的順番は必ずしもこのとおりというわけではありません。
閉店のためのそれぞれの作業のタイミングについても、居抜き店舗の専門業者に、店の状況に合わせたアドバイスをもらいましょう。
- 居抜き専門業者に依頼
- 借入金については各金融機関に相談
- テナントオーナーと不動産管理会社へ解約の告知
- 従業員への解雇の通知
- 取引先への連絡
- お客様への告知
- 造作譲渡の契約の締結
- リース物件の精算とレンタル品の返却
- 賃貸契約の解約
- 電気、ガス、水道の解約
- 物件の引き渡し
- 保健所、警察署、税務署など行政機関への届け出
まとめ
閉店時に必要な手続きと、居抜き店舗売却のポイントについてご紹介しました。
しかし、居抜きでの店舗売却は閉店コストを削減できる反面、必ずしも買取希望者が現れるとは限らないということを忘れてはいけません。
譲渡が成立しなかった場合、閉店までにどれぐらいの費用がかかるかを事前に把握しておくことも重要です。
また、買取希望者が現れても、譲渡金額の交渉がまとまらない場合もあります。売り手はできるだけ高く売りたいものですが、反対に買い手はできるだけ安く買いたいと思っていますので、最終的には双方の歩み寄りがとても大切です。
居抜きで店舗を売却する最大の利点は、解体工事費や廃棄物処理費といった原状回復費用をかけずに店舗を閉店できることです。
利益をあげることに固執せず、柔軟な姿勢で交渉していくことが円滑な取引をおこなう秘訣といえるでしょう。