飲食店を経営されているオーナーさん・店長さんは自店のドリンクの原価率をしっかりと出せていますか?
実はなんとなくの相場の値段で販売価格を決めていませんか?
私は30年以上飲食業界に携わってきました。
これまで、フードの原価率より実はとても大切なドリンクの減価率をしっかり計算してきて利益を伸ばしてきました。
今回の記事では、
最後までお付き合いください。
飲食店において、ドリンクは利益を出すためにはなくてはならない存在です。
そこで正しい計算方法を知ることで、今よりも楽に経営を進めていけます。
それでは私と一緒に詳しく見ていきましょう!
注目記事:飲食店の開業資金はゼロから始められるのか?物件選び・資金調達は?
ドリンクの原価率
早速ドリンクの原価を見ていきましょう。
ドリンクの種類は数え切れないほどあるので、今回は代表的なビール・チューハイ・ウィスキー・日本酒・焼酎に分けて見ていきます。
ビール
ビールの原価は、種類によって変わりますが20Lの樽が10000円ぐらいで買えるぐらいだと言われています。
分解すると1ml = 0.5円ですね。ビールジョッキの容量が約400mlだとすると単純計算200円の原価がかかることになります。
しかし、実際は3割ほど泡の部分もありますので、正味7割がビールだとすると 400 × 0.7 = 280ml ということになります。
よって、ビールの原価は中ジョッキの生ビール1杯で、約140円ぐらいということになります。
売値については地域の相場やお店の方針によって変わる部分ではありますが、飲食店の想定原価率30%ということを考えると480円ぐらいが売値になりますね。つまり
という計算になります。
チューハイ
チューハイも今回は樽換算で考えます。
樽の価格は10Lでおおよそ3500円ぐらいです。
ビールと同じ容量のグラスで入れると仮定して氷が入ることも考えると実質の容量は250mlぐらいと言われています。つまり10L樽1つで理論上40杯取れます。
(実際はロスが出るのでこれよりも少なくなります。)40杯で3500円ということは1杯あたり約87円となります。
売値はビール同様原価率から計算すると約300円となります。若干相場よりも安い感じがしますね。
一杯300円ぐらいだと立ち飲み屋さん価格なので、着席の居酒屋であればもう少し高い金額で販売してもいいでしょう。
今回は考慮せず、このまま計算すると
となります。
ウィスキー
次はウィスキーです。ウィスキーは銘柄、飲み方によって変わりますが、今回はカジュアルなウィスキーをハイボールで飲んだ場合で計算しましょう。
ウィスキーは1本700mlです。それを1200円で仕入れたとしましょう。
ハイボールに使用するウィスキーは1杯あたり30ml(グラスによって変わります)とすれば、原価は約51円。
これにソーダ代が加算されます。ソーダは瓶の物を使えば1本50円ぐらいかかります。
合わせて約100円ぐらいになりますね。原価率から計算する売値は333円。
となります。
日本酒
日本酒の大きさは一升瓶で1.8L、四合瓶で720mlとなっています。
注文単位も一合(180ml)単位のお店が多いので、一升瓶だと10合、四合瓶で四合取れることになります。
日本酒の価格もピンキリですが、一升瓶を1500円で仕入れたとしましょう。
そうすると原価は1号あたり150円、売値は500円になります。
焼酎
焼酎も飲み方が色々あるドリンクです。
ロック、水割り、ソーダ割り、烏龍茶割りなどなど。
種類も全国各地にあり、プレミアがつくほどの人気の物から大衆向けの物まであります。
ここでは仮に一升瓶の焼酎を1500円で仕入れて、飲み方はどの飲み方にしろ1杯90mlの使用と仮定した場合の金額を考えてみます。
1杯90mlであれば20杯取れますので 1500 ÷ 20 =75円が原価となります。
原価率30%から換算すると売値は250円になります。
結構安いですね。
飲食店のドリンクメニューの重要性
飲食店で原価率を下げてより利益を確保する方法は、いくつもあります。
例えば、値上げ・材料使用量の再考・仕入れ先の変更・食材ロス対策・クーポンの再考などがあります。
特におすすめなのが、アルコール類の販売強化による原価率ダウンです。
ほかの方法と比較して実行しやすく効果が得やすいので、繁忙期でも取り組めます。
以下、原価率におけるアルコールドリンクメニューの重要性を解説します。
食品に比べてロスが少なくおすすめしやすい
ドリンクメニューは食品に比べてロスが発生しにくいのが大きなメリットです。
ビール・日本酒など消費期限の管理が必要なアイテムもありますが、ほとんどの場合、少量からの仕入れが可能なため、在庫管理も難しくありません。
同じ店舗内で、スタッフの知識・スキルの差に悩んでいる飲食店関係者も多いでしょう。
アルコール類はフードメニューに比べてスキルが未熟なスタッフでもおすすめしやすく、販売を強化しやすい点も大きなメリットです。
アルコールは原価が低く原価率ダウンに結びつきやすい
アルコールドリンクはフードメニューに比べて原価率が低い傾向にあります。
売上を強化してアルコール類の売上シェアをアップすれば、お店全体の原価率ダウンに直結します。
「飲食店においてはビール以外のお酒(ワイン、日本酒、焼酎)や割り材(水、お茶、レモン、炭酸水、氷)などは利益率が高いです。そのため、これらのお酒や割り材でしっかりと利益を確保することが大事になります。」
(なんでも酒やカクヤス担当者より)
フードは、メニューによってお客様に出すまでにある程度の時間・労力がかかります。
一方、ドリンクは基本的にスタッフ1人で短い時間で対応できるため、人件費面でのコストダウンにもつながります。
アルコールドリンクの売上強化による効果が出た場合、ミーティングで「アルコールの売上強化で原価率がこれだけ改善しました」などの情報共有をスピーディーに行なえば、店舗スタッフのモチベーションアップにもつながるでしょう。
売値の付け方
ここまでは原価から売値を算出する方法でやってきましたが、全てをそうする必要はありません。
上記メニューの中で、もっとも人気があるであろうビールは、多くの人に楽しんでいただけるよう原価率が少し高くなっても安く出しても良いと思います。
その分そもそも原価の低い焼酎や、ウィスキーの値段を調整することにより全体なバランスを整えることができます。
利益額から考えるという視点
そして、ウィスキー、焼酎、日本酒といった商品は種類がとても多く価格もピンキリです。
その全てを原価率30%で提供してしまうと、あまりに高額になってしまう商品も出てきます。
そういった時は、原価率ばかりに目を向けるのではなく利益額からも考えてみましょう。
お客様1人あたりが飲めるお酒の量は限られています。
原価率が適正でも利益額が低いものばかりだと、最終的にお店の運営に影響を与えることになります。
そういったことから原価率が高くても利益額も高い商品を導入することが健全な営業に繋がるのです。
ドリンクメニューにおける原価率の違い
一言でドリンクメニューと言っても、ドリンクの種類によって原価率が大きく異なります。
例えば、ビールであれば1杯200円前後の原価がかかり、原価率に直すと30%前後が一般的です。
一方、ハイボールやサワー系の場合、1杯50円前後と原価率が低いため、1杯当たりの利益率が高くなります。
安い原価率のドリンクを看板メニューにし、お客様を集客するのも1つの手です。
流行している飲食店では、ドリンクの原価率を考慮してイベントやメニューが立案されています。
なお、ドリンクメニューで最も原価率が低いのはソフトドリンクです。コーヒーやジュースの原価率は5〜10%と低いため、利益率はかなり高いと言えます。
FD比率を理解して目標設定を定める
飲食店で利益を上げるためには、FD比率を理解して目標設定を定めることが重要です。
FD比率とは、売上に対するFood(料理)とDrink(ドリンク)の比率のことを意味します。
FoodとDrinkの比率は、飲食業界によって異なりますが、一般的には以下のようになります。
- レストランやカフェなどのフルサービス業態では、Foodが60〜70%、Drinkが30〜40%程度です。
- バーなどのドリンクを中心に提供する業態では、Drinkが80%以上、Foodが20%以下になることが多いです。
このように、業態によってFoodとDrinkの比率は異なるため、目標設定にあたっては、自社の業態や顧客層に合わせた比率を考慮する必要があります。
例えば、フルサービスレストランであれば、目標設定の際にはFoodの売上に重点を置くことが適切です。また、ドリンクの売上を伸ばしたい場合は、ドリンクのメニューを充実させたり、アルコールの提供時間を延長するなどの施策を検討する必要があります。
一方で、バーなどのドリンクを中心に提供する業態であれば、Drinkの売上に重点を置いた目標設定を行うことが適切です。ドリンクメニューの充実やイベントの開催などを通じて、ドリンクの売上を増やす施策を検討する必要があります。
目標設定の際には、過去の売上データや競合他社の動向を分析し、現実的かつ効果的な目標を設定することが大切です。
ドリンクメニューによって原価率は違う
また、ドリンクと一言で言っても、メニューごとに原価率は変わってきます。
ビールは仕切りが高く、150円~200円/杯の原価がかかるため、提供価格にもよりますが、原価率が30%程度となります。
一方、最近流行りのハイボールやサワーなどの炭酸系は、30円~50円/杯なので、原価率10%程度。
フレッシュフルーツなどを使ったカクテルは、廃棄ロスも高く、 原価もかかるので原価率30%程度となってしまいます。
ハイボール1杯200円。お一人様何杯でもOKです!
最近はこのような看板を掲げて集客をしている居酒屋が多くなってきましたが、ハイボールの安さでお客様を引き付けておいて、その他のフードやドリンクメニューで 利益を稼いでいこうという戦術です。
もちろん、ハイボール自体は原価率が低く、オペレーションも簡単なので、200円で提供してもしっかりと利益確保することが可能です。
安いからと安心して何杯もお客様がハイボールを飲み、良い気分になってフードドリンクもどんどん追加注文してくれる、という素晴らしいサイクルですね。
さらに言えば、一番原価率が低いのはソフトドリンクです。ファミレスなどのドリンクバーでは、1杯あたりの設定単価は5円~10円程度です。
普通のテーブルレストランに おいても、コーヒー1杯の原価は10円~15円程度で収まりますので、しっかりとお客様にドリンクのアピールをしていくことが重要です。
実際のオペレーションはどのようにすれば良いのか?
では、FD比率目標をしっかりと立て、その目標を達成し続けるためには、具体的にどのようなアクションを起こしたら良いのでしょうか?
この答えは、シンプルに言えば、「ドリンクをお客様にしっかりとお勧めする」ことです。
店長はご来店のお客様や提供メニューごとに
- ・「このテーブルはファーストドリンクとフードだけでオーダーが止まってしまっているな。
ワンモアドリンクをスタッフに指示しよう」 - ・「このお客様はとにかく日本酒がお好みのようだな。メニューに載せていない飲み比べ裏メニューをお勧めしてみよう」
- ・「この激辛メニューには絶対にビールが合うな。注文が入ったら必ずセットで頼んでもらえるよう、メニューの付記と従業員1分ロープレを実施しよう」
など、しっかりと状況を把握して、スタッフに指示を出したり、メニューを書き換えることなどが必要です。
飲食店経営において、FL比率が最も重要な管理指標の一つですが、その食材原価率を左右するのが、FD比率だということをご理解いただけたのではないかと思います。
ぜひ、日々や月間の売上目標だけでなく、FD比率目標をしっかりと設定され、無理のない範囲で原価率を下げていくことにトライしてみてください。
アルコール販売強化のポイント
アルコールの売上をアップさせるための施策を解説していきます。
お客様の動きを見逃さない
ドリンクのオーダーやおかわりの要望があるお客様は、スタッフを目で探したり手をあげたりするなど、なんらかのサインを送っているはずです。
お客様のオーダーのタイミングやおかわりのタイミングを見逃さないようにしましょう。
サインや合図になかなか気付いてもらえないと、お客様のオーダー・おかわりに対するテンションが下がってしまいます。
お店に対する印象が悪くなるリスクもあるため、お客様の「飲みたいタイミング」を逃さない接客の姿勢が大切です。
季節感やトレンドに合わせてメニューをアップデートする
定番メニューは手堅くオーダーが入ります。グランドメニュー以外に、「期間限定」「季節のフェア」などの差し込みメニュー・POPを作成すれば、売上アップが期待できます。
メニューに季節感・トレンドを積極的に取り入れるとお客様に興味を持ってもらえるため、「こちらも頼んでみたい」という気分にさせることができるでしょう。
フードメニューに季節感・トレンドを反映させると手間がかかり、食材ロスのリスクも避けられません。
原価率に悪影響が出るおそれもあります。しかし、ドリンクなら気軽に季節感や流行を反映できるはずです。
見やすく、おすすめしやすいメニューを作成する
ドリンクメニューはお店のコンセプトに合ったデザインで、お客様に見やすくスタッフがおすすめしやすいよう工夫します。
各ドリンクの情報が少なすぎるのはNGですが、多すぎてもいけません。
ドリンク情報に過不足がなく、お客様が「飲んでみたい!」という気持ちになるメニューを作成しましょう。
まとめ:飲食店のドリンク原価率をしっかり計算することで利益を確実に伸ばす!
飲食店のドリンク原価率を正確に計算することは、利益を確実に伸ばすために非常に重要です。原価率が高すぎると、売上に対する利益が低くなり、経営の安定性に悪影響を与える可能性があります。
以下は、飲食店のドリンク原価率を計算する方法です。
- 原価計算 まずは、ドリンクの原価を計算します。原価は、仕入れ価格+仕入れにかかった費用(配送料や手数料など)です。例えば、ビールを仕入れる場合、1本あたりの仕入れ価格が200円、配送料が50円、手数料が10円であれば、原価は260円となります。
- 売価計算 次に、ドリンクの売価を計算します。売価は、原価に対してどの程度の利益を乗せるかを決めます。一般的に、飲食店では3倍から4倍程度の利益率を目安とします。例えば、ドリンクの原価が260円の場合、3倍の利益率を目指すとすると、売価は780円となります。
- 原価率計算 最後に、原価率を計算します。原価率は、原価を売価で割った割合を示します。例えば、ドリンクの原価が260円、売価が780円の場合、原価率は33.3%となります。
原価率を正確に計算することで、どのドリンクが利益を生みやすいのか、メニューの価格設定をどのようにするのかなど、経営戦略の立案に役立てることができます。また、原価率が高すぎる場合には、仕入れ先を変更したり、売価を見直したりするなどの対策を講じることが必要です。