飲食店のオーナーさんは自店が24時間営業をすれば売り上げが上がるとお思いではないでしょうか?
単純に考えると売り上げは上がります。
しかし、利益はかなり下がる外、従業員への給料が上がりますし、従業員の確保がかなりのネックになってきます。
例えそれらをクリアしたとしても実際24時間営業は本当に正しいのでしょうか?
最近では大手ファミリーレストランは24時間営業から撤退しています。
牛丼チェーンも深夜はテイクアウトのみ営業や閉店しています。
コンビニですら深夜は閉店している時代に24時間営業を始めて勝算があるのでしょうか?
今回の記事では、
私は、30年以上飲食業界に携わってきました。
色々なオーナーさんの下でたくさんの飲食店を立ち上げ・立て直しをしてきました。
だからこそわかる細かなところを記事にしています。
少しでも参考になれば幸いです。
今回の記事を読むと、
自店が24時間営業するべきなのか・・・それともしないほうがいいのかがわかるようになっています。
それでは最近の世の中の動向や24時間営業に必要な要素をみていきましょう。
最後までよろしくお願いいたします。
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飲食店が24時間営業するには?色々とクリアするべきポイント
飲食店を24時間営業するには、いくつかの重要なポイントをクリアする必要があります。以下は、24時間営業を実現するための基本的なステップと注意点です。
- 地元の法令を確認:
- まず、地元の法律や規制を確認しましょう。一部の地域では24時間営業が禁止されている場合もあります。法的要件に従うことが最優先です。
- 営業許可の取得:
- 24時間営業を行うには、営業許可を取得する必要があります。地元の規制機関や市町村役場に申請し、許可を取得しましょう。
- セキュリティ対策:
- 夜間に営業する場合、セキュリティが重要です。監視カメラの設置や警備員の雇用など、店舗と顧客の安全を確保する対策を講じましょう。
- スタッフのスケジュール管理:
- 24時間営業では、スタッフのシフト管理が課題です。適切なスタッフを配置し、適切な休憩時間を確保することが重要です。また、夜間勤務のスタッフには安全を確保するためのトレーニングを提供しましょう。
- 食材の調達と保存:
- 食材の調達と保存にも注意が必要です。新鮮な食材を24時間提供できるように供給チェーンを確立し、適切な冷蔵設備を備えましょう。
- メニューとサービスの最適化:
- 24時間営業に合わせて、メニューやサービスを最適化しましょう。朝食、ランチ、ディナー、深夜のメニューを用意し、顧客のニーズに対応しましょう。
- 広告と宣伝:
- 24時間営業の情報を顧客に広告しましょう。ウェブサイト、ソーシャルメディア、看板、チラシなどを活用して営業時間を宣伝し、新たな顧客を引き寄せましょう。
- 競合店の分析:
- 周辺の競合店がどの時間帯に営業しているかを調査し、競争力を保つために工夫しましょう。
- 定期的な点検とメンテナンス:
- 営業時間中に設備や設備の点検とメンテナンスを定期的に行い、トラブルを予防しましょう。
- 顧客フィードバックを収集:
- 顧客からのフィードバックを収集し、サービスの向上を図りましょう。24時間営業においても顧客満足度を重視しましょう。
24時間営業は多くの課題を伴いますが、需要がある場合や競合店に差別化を図りたい場合には成功することができます。地元の法律に従いながら、適切な計画とリソースを活用して24時間営業を実現するために努力しましょう。
24時間営業の飲食店が減っている理由とは?
最近は、飲食店だけでなくコンビニも24時間営業をやめる流れになってきています。
それは何故なのでしょう?
今、社会的にこのような動きになっている一番の理由は、国内での働き方改革が進んできているからです。
24時間営業をしている飲食店などで働く従業員は、勤務終了時にお客さんが店にいるとシフトから抜けることがなかなかできません。
結果的に、長時間労働になってしまうことも珍しくないのです。
特に深夜の時間帯に働く従業員は、長時間労働になりやすいだけでなく、深夜時間の営業を従業員1人に任せる「ワンオペ」と呼ばれる過重労働であることも多いです。
実際に24時間営業を行っている、とある牛丼チェーンの運営会社が設置した労働環境改善に関する第三者委員会が、従業員たちに労働実態の調査を行ったところ、多くの従業員から過酷な労働状況を訴える悲痛な叫びがあったということです。
飲食店の24時間営業は、従業員の長時間労働や過重労働になりやすいため、昨今の働き方改革で労働環境が見直されてきています。
さらに、深夜に従業員を過重労働させているというイメージが定着してしまうと、企業ブランドを大きく崩してしまいます。
そもそも深夜の来客数が減っている?
24時間営業をする飲食店が減ってきているもう1つの理由は、深夜の客足が大幅に減少していることが挙げられます。
深夜の客数が減っているのは、消費者の購買力が大きく減少していることが主な原因だと言われています。
近年は人々の生活行動が夜型から朝方にシフトしているので、深夜のファミレス需要が減っています。
もともと、深夜に営業しているファミレスなどの飲食店は、若者たちが集まる場所としての需要がありました。
しかし、人々の生活行動が夜型から朝方にシフトしていることや、インターネットやSNSの発達により、深夜に若者のたちが集まる場所への需要がなくなってきました。
さらに、深夜に働きたいと考えている方も減ってきているので、深夜時間帯の労働者を確保するのが、どこの飲食店でも難しくなっています。
そのため、どこの飲食店も深夜に働いてくれる労働者を確保するために、人件費を上げるしかありません。
深夜の客足は減ってきているのに、人件費は上げるしかないため、深夜営業が割に合わなくなっているのも、24時間営業をやめる飲食店が増えてきている理由といえます。
24時間営業はムダが多過ぎる
普通に考えて、24時間ずっとお客様で満席なんてあり得ないですね。
食事の時間はだいたいの人が朝昼夜似たような時間帯になる。
従業員側から考えても来るかどうか分からないお客様を待ち続けること程ツラいものはない
店舗側としても、深夜の予約なんてのはまず入らないから、スタッフの数はギリギリにしぼって、来るかどうか分からないお客様をひたすら待つしかない。
店を開けている限りは光熱費やら人件費やらかかるわけだから、どうせやるのだったらお客様の来店が見込める時間帯にやった方が費用対効果いいに決まっている。
やることない時は掃除しようってなるんだけど、いつお客様がくるか分からない状況で隅々まで完璧な掃除ってなかなか難しいです。
それならもう、昼間や夕食時の忙しい時間帯にみんなで元気に働いたほうがいいですね。
過剰な労働時間は違法になる
営業と利益の問題だけを考えて営業時間を判断したときに、落とし穴になりやすい点が1つあります。
それは労働基準法の問題です。
労働基準法は規模や業態に関係なくあらゆる事業所に適用される労働者を守るための法律で、その中で、1人の従業員が1週間で働いてよい時間は合計40時間以内(小規模の事業の場合は特例で44時間以内)、月に休日を4日与える、ということが決まってます。
これは個人経営の飲食店でも、相手がアルバイトでも同様です。従業員と経営者の間で協定を結べば、残業や休日出勤をさせることはできますが、いずれにしても守らなかった場合は、最悪経営者の逮捕もあり得ます。
したがって、仮にいくら1日に20時間営業すればどの時間帯でもさらに利益が上がるということが分かったとしても、その時間帯に労働基準法を守りながらシフトが組めるだけの現有戦力の従業員の態勢が整っているかどうか、ということも同時に判断しなければならなりません。
24時間営業にはメリット・デメリットがある
では長時間営業のメリット・デメリットにはどんなものがあるのでしょうか?
【メリット】
●顧客を獲得できる時間が長い
営業している時間が長いため、いろいろなニーズの顧客を取り込める、というメリットがあります。
●深夜帯に働きたい兼業の人に働ける場所を提供できる
事情により、昼間は普通に仕事をして夜の時間に数時間アルバイトをしたいというニーズもあります。
もちろん、体力的には大変だとは思いますが、夜間、深夜帯ならアルバイトができるという意味ではメリットです。
もちろん、人材が集まらなければこの点はデメリットになってしまう点ではあります。
【デメリット】
●人件費がかかる
長時間営業しても思った以上に来客数が増えず、一方で人件費は変わらず支払う必要があるためかえって赤字になってしまうことがあります。
●長時間労働による質の低下
長時間営業に伴い、従業員の勤務時間も長くなるため、仕事の質が低下したり、お客様に対するサービスに影響が出ることがあります。
また、人員不足などの問題があるならその影響はさらに大きなものとなるでしょう。
●食材を無駄にする傾向がある
営業時間が長いということはそれだけ多くの種類のメニューを提供しなければなりません。
そうしなければお客様が飽きてしまい、客足が減る可能性があるからです。
しかし多くの種類のメニューを提供する一方、それらの食材が無駄になってしまう可能性が増えるのも事実です。
そのため全体的に見て長時間営業がプラスにならないことがあります。
●光熱費がかかる
もし長時間営業をして収益が人件費や光熱費をかなり上回っていれば問題ありませんが、あまり収益が見込めないなら光熱費が負担になることがあります。
長時間営業を考えておられるならあまり性急に判断せず、以上のメリット・デメリットをよく検討することをおすすめします。
開店時間と閉店時間を見直すポイント
では以上を前提に、店舗の開店時間、閉店時間、あるいは中間のアイドルタイムをどのように決めるかのポイントについて説明します。
客数の動きと街の客動線を見る
まずは、店舗の立地にどのような特性があるのかということをよく観察しましょう。
まず現在の営業時間中については、曜日ごとに1時間単位の来店客数を最低でも2か月間記録し、曜日ごと×1時間単位で集計します。
閉店時間中やアイドルタイム中については、最低1週間は店の外に出て、その時間帯にどういう人がどの程度前を通るのか、ということを観察します。
前者によって、曜日ごと×1時間単位の来店数が、今までは感覚だけだったものが数字として明確にわかります。
後者によっては、その人の観察眼次第ですが、意外に人通りがあるとか、隠れたニーズが眠ってそうだ、とかの判断の参考材料が見つかります。
曜日ごとの1時間単位の利益を算出する
最終的には利益が上がっているかどうかが基準になりますので、今度は毎日の営業時間内の1時間単位での利益を出します。
1時間単位での売上から原価を引き、その間にかかった人件費、光熱費、そして1時間単位に割り戻した家賃と減価償却費を引いて算出します。
これも最低2か月間は集計して、それを曜日ごと×時間単位にまとめます。
すると、明確に、利益が出ている曜日と時間帯、赤字になっている曜日と時間帯がわかります。
以上の方法で実態がつかめたら、
- 今の営業時間のうち赤字の時間帯の閉店
- 可能性がありそうな時間帯にテスト的に営業してみる
という方向で営業時間の見直しを行いましょう。
曜日ごとの変更も可
これらの分析をすると、来店があって利益が上がる時間帯が曜日によって異なることも分かってきます。
その場合は積極的に、曜日ごと営業時間の変更を行いましょう。
たとえば
- 木~金曜日は 24:30閉店
- 土曜日は 24:00閉店
- 日祝は 23:00閉店
といった具合です。同様に開店時間についても、あるいはアイドルタイムについても、このように曜日ごとに変えても、それをお客様にしっかり告知できれば問題ありません。
赤字の営業時間帯を黒字にする努力も必要
現在赤字、あるいは損益が±0に近いレベルで推移している時間帯は、本当に営業を止めてしまったほうがいいのか、最終判断の前にまず考えたほうがよいでしょう。
客層と料理がマッチしていないのかもしれませんし、価格や1皿あたりのポーションがニーズを満たしていないかもしれません。
さらには、その1品で集客力がぐんと上がるような「キラーコンテンツ」の料理を考えられないか、という検討も必要です。
ハッピーアワーのように、閑散気味の時間帯の集客販促の実施もあり得るでしょう。
このように「守り」だけではない、売上を取りに行く「攻め」の戦略も同時に考えることで、初めてバランスのよい店舗経営ができるのです。
ぜひその観点でも考えてみましょう。
従業員満足度もチェックして営業時間を考えよう
店長、あるいは経営者としては満足でしょうが、気にしなければならないのは従業員満足度や疲労度です。
労働基準法に基づいて従業員と協定を結び、残業や休日出勤も法的には可能になったとしても、過労度や従業員満足度に影響がないか、しっかり考えて実施しなければなりません。
別のケースもあります。営業時間が短くなったことでシフトが減り給料が減るという場合です。
それもまた従業員にとっては不満のもとになり、場合によっては他の飲食店との兼業、あるいはほかの店へ移ってしまうということも考えられます。
営業時間の変更が従業員満足度にどう影響するのかよく考えることが重要です。
また、実施後も目を配る必要があります。お客様が増えても、元気で笑顔なスタッフが迎えられなければ本当の繁盛店にはなりません。
従業員満足度が高い店舗は顧客満足度も高い傾向にありますので、店長、経営者の方はその点にもしっかり目を配ってください。
まとめ
24時間営業の飲食店が長時間労働や過重労働になりやすいのは、深夜に働く労働者の確保が難しくなっていることも理由にあります。
少し前までは、深夜に店を開けてもたくさんお客さんが来ましたが、人々の生活行動やコミュニケーションが変化した今、今後も深夜の客足が増える可能性は低いと言ってよいでしょう。
さらに、深夜に働いてくれる労働者を確保するための人件費は、どんどん高くなっていきます。
飲食店が24時間営業をやめる背景にはこのような理由があったのですね。