飲食店のオーナーさん・店長さんは自店の利益率は何%に設定していますか?
「売り上げを上げる努力はしているけれど、なかなか利益が上がらない」とお悩みではないですか?
街中ではお客さんがたくさん入っているのに潰れてしまうお店や、普段ガラガラなのになかなか潰れないお店がありますよね?
実はそこには利益率のカラクリがあります。
売上高に対して利益が占める割合を示す「利益率」は、飲食店経営の成否を分ける重要な指標です。
いかに利益率を上げられるかによって、経営者としての手腕が問われると言えるかもしれません。
私は、飲食業界に30年以上携わってきました。
色々なオーナーさんの下でたくさんの飲食店を立ち上げ・立て直しをしてきました。
だからこそわかる細かのところを記事にしています。
少しでも参考にしてください。
月間に1,000万円売り上げたら、いくらくらいの利益が残るのか、をしっかりと知りたいですよね?
先に結論から言えば、飲食店で月商が1,000万円だった場合、残る利益は50~80万円程度しかありません。
これはあくまで適正利益率などから出てくる数字で、しっかり管理しなければ利益はもっと少なくなり、簡単に赤字に転落してしまいます。
営業利益とは、売上からかかっているコストを引いた額で、営業利益率は、売上に対して、利益が何%残っているか、で計算します。
営業利益=「売上高-コスト」
営業利益率=「営業利益÷売上高×100」
これらを踏まえて今回の記事では、
飲食店の利益率の相場は?
飲食店にかかる経費の内訳
利益が出ない場合に考えられる原因
飲食店の利益率を上げる5つの施策
利益率以外に飲食店経営をするうえで知っておくべきこと
飲食店経営を成功させるには利益率アップが必須
詳しく解説していきます。
これから飲食店を開業しようと考えている方や、利益率が伸びずに悩んでいる経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
それでは私と一緒に見ていきましょう!
注目記事:飲食店の開業資金はゼロから始められるのか?物件選び・資金調達は?
飲食店の利益率って何%が理想?
飲食店の利益率の理想的な目標は、業種や地域、経営方針などによって異なります。一般的には、飲食店の利益率は売上高の20%から30%程度を目指すことが望ましいとされていますが、これはあくまでも目安であり、実際には業態や地域によって大きく異なります。
例えば、高級レストランやフランチャイズ店舗などの場合、利益率は20%以上が望ましいとされます。一方、ファストフード店や居酒屋などの場合は、利益率が20%未満でも経営が成り立つ場合があります。
ただし、利益率だけに注目するのではなく、コスト削減や販売促進などの戦略を組み合わせ、売上高や顧客満足度を向上させながら、長期的な経営の安定を図ることが重要です。
月商が1,000万円だった場合、残る利益は50~80万円程度しか残らないの?
飲食店を経営していく上で様々なコストがかかってきます。
月商が1,000万円ある場合は、その売上をつくるための「食材原価(肉・魚・野菜・酒など)」と接客や調理をするための「人件費」、「水道光熱費」や「販売促進費」などがかかります。
これらを「変動費」と言います。売上の上下に連動して変動する費用のことです。
そして、この変動日以外にも毎月かかってくる費用があります。それは、「固定費」です。
この「固定費」とは家賃や減価償却費、リース料などがあります。
1,000万円の売上を100%とした時に、これらのコストはどれくらいの%ずつかかっているのでしょうか?
- 売上高:1,000万円(100%)
- 食材原価:350万円(35%)
- 人件費:270万円(27%)
- 水道光熱費:50万円(5%)
- 販売促進費:30万円(3%)
- 雑費:50万円(5%)
- 家賃:100万円(10%)
- 初期条件:100万円(10%)
と大まかになりますがこのような感じです。
売上高に対するコストは95%となる計算です。
利益率は5%となります。
飲食店経営では、工夫をせずにいたら、仮に1,000万円の月商があっても営業利益は50万円しか残らないのです。
500万円の月商では25万円です。
経済産業省が発表した「商工業実態基本調査」によると、飲食業界全体における利益率の平均は「8.6%」です。
これでは、何のために開業資金を借り入れて頑張っているのか、分からなくなってしまいますよね。
注目記事:飲食店の電気代平均は?電気代がかかる要因と改善方法の解説!
飲食店の利益率の相場は?
先ほども出てきましたが、経済産業省が発表した「商工業実態基本調査」によると、飲食業界全体における利益率の平均は「8.6%」です。
飲食店の利益率は10%〜15%あるのが理想とされますが、繁盛店の中には利益率が30%を超えているところもあります。
これから飲食店を開業しようとしている方は、まずは平均値である利益率8.6%を目安に営業をするとよいでしょう。
経営していく中で利益率が安定して8.6%を超えるようになってきたら、次は目標値とされる10%〜15%を目指すといったように、段階的に目標を引き上げていくといいでしょう。
注目記事:解決!飲食店の粗利率はどれくらい?利益率を上げるには?計算式は?
飲食店にかかる経費の内訳
飲食店経営していく上でかかる経費は「変動費」と「固定費」の2種類に分けられます。
変動費とは売上の変動によって金額が変わる経費、固定費とは売上の変動にかかわらず金額が変わらない経費のことを言います。
具体的な経費項目の一例は以下のとおりです。
【変動費】
●仕入原価
●水道光熱費
●旅費交通費
●人件費(パート・アルバイト)
●販売促進費(チラシなど)
●消耗品費
【固定費】
●家賃
●人件費(正社員)
これらの経費は飲食店を経営していく上で必要なランニングコストです。
営業利益は10%以上を確保するのが理想とされているため、その点を意識しながら経費の割合を組み立てていくことをおすすめします。
目安として、変動費は60〜70%、固定費は15〜25%程度に抑えることを目指しましょう。
注目記事:飲食店のランニングコストを考えよう!5つの見直しで利益獲得!!!
飲食店の利益率の計算方法
そもそも利益率とは、売上高に対して利益がどのくらいの割合を占めるのかを表す指標で、別名「営業利益率」とも呼ばれます。
利益率を算出するには、まず「粗利(売上総利益)」と「営業利益」という2つのワードについて知る必要があります。
粗利(売上総利益)
粗利とは「売上から原価を引いたもの」です。
難しく考えることはありません。
1皿1,000円の料理を提供しており、原価(原材料費)が400円だった場合、粗利額は600円になります。
粗利額は、「1皿売ったら、いくら儲かるか?」がわかる指標であるとも言えるでしょう。
また、粗利率は、粗利額が売上の何パーセントにあたるかを計算しますので、1,000円÷600円=60%ですね。
粗利率60%のメニューは、「1皿売ったら、6割が儲けになる」メニューと言い換えることができます。
また、飲食店を経営するうえで重要と言われる指標に「原価率」がありますが、これは「売上に占める原価の割合」なので、「原価(原材料費)÷売上」で求めることができます。
粗利額とは反対の考え方で、「1皿売るのに、いくらかかるか?」がわかる指標です。
先ほどの原価400円、販売価格1,000円の料理の例では、1,000円÷400円=40%が原価率になります。
営業利益
さて、1皿1皿販売実績を積み重ねていくと粗利額が累積していきます。
先ほどの料理の例では1皿600円も儲かっていましたね!
1日50食出れば3万円の儲け。
これが1か月続けば90万円の儲けです。
なんだかずいぶん良い商売のように見えてきますが、大事なのはここからです。
月末には、仕入先への支払い・賃料の振込み・アルバイトへの給料の支払いが待っています。
そうです。これらの「経費」を「粗利益」から差し引いたのが「営業利益」です。
至極簡単に言ってしまうと、「本当の儲け」とも言えるかもしれません。
営業利益を求める前に、経費についておさらいしておきましょう。
経費には大きく分けて2種類あります。
①変動費
お店の売り上げの変動に依存する費用です。
原材料費・アルバイトの人件費・水道光熱費・販売促進費(チラシ代など)が変動費にあたります。
売り上げの多い・少ないに合わせて変動する費用なので、こまめな監視が必要です。
②固定費
お店の売り上げに関わらず発生してしまう、額が変動しない経費です。
家賃/地代、減価償却費などが固定費にあたります。
どんなにお客さんが少なくとも店舗をオープンしている限り発生してしまう費用です。
営業利益は、「売上高-粗利額-経費(変動費+固定費)」で求めることができます。
また、営業利益率は、「営業利益額(粗利額-経費)÷売上高」で求めることができます。
仮に、月商1000万円の店舗で営業利益が10%だとすると、営業利益は100万円です。
なんだか、ずいぶん少ないように思われるかもしれませんが、一般的に飲食店経営は営業利益率10%あれば、ある程度優良な経営をしている店舗と言われます。
利益が出ない場合に考えられる要因
飲食店経営においてなかなか利益が出ない場合は、以下のような要因があると考えられます。
回転率が悪い
飲食店における回転率とは、お客様の人数を客席数で割った比率をいいます。
基本的に回転率が上がるほど売上も高くなるため、利益が出ない場合は回転率が悪いことが一つの要因として考えられます。
飲食店で回転率を上げるには、料理の提供時間を短くする、注文や会計をスムーズに行うなどの工夫が必要です。
注目記事:簡単キャッシュレス決済導入!費用は?「スクエアターミナル」徹底解説!
原価(食材費)が高い
利益が出ない場合は、原価(食材費)を見直していく必要があります。
開業当初は原価率を上げてでもコストパフォーマンスを重視する傾向がありますが、すべての商品を高原価率にすると経営が立ち行かなくなってしまいます。
お客様を呼び込むための集客商品を設定するのであれば、それと合わせて注文していただける高収益商品(=原価の低い商品)も考えておくことが大切です。
注目記事:飲食店の原価率は本当に平均30%でいいの?経営に役立つ考え方を解説!
人件費をかけすぎている
原価と同様に、人件費も高くなりやすい経費項目の一つです。
飲食店に適正な従業員の人数を把握するには、売上高を総労働時間で割った「人時売上」を用いるとよいでしょう。
人時売上とは従業員1人あたりが1時間にどのくらい売り上げたか表す指標であり、飲食店の場合は4,000〜5,000円程度が目安となります。
目標とする金額を割り込んだ場合は、労働時間の見直しやシフトの調整を検討しましょう。
注目記事:飲食店の人件費割合は本当に30%でいいのか?経営者が知っておくべき事
飲食店の利益率を上げる5つの方法
飲食店の利益率を上げるには、主に以下5つの方法があります。
①食材費を見直す
②食品ロスを減らす
③高利益メニューを考案する
④回転率を上げる
⑤人件費を抑える
それぞれどのような内容なのか、順番に説明していきます。
利益率を上げる方法①「食材費を見直す」
高額な食材費が原因で売上が伸びないとしたら、仕入先を変えることで問題が解決する可能性があります。
たとえば食材の仕入先を、近所のスーパーからより安く購入できる業務用食材店に変えることで、仕入れ原価は抑えられるでしょう。
食材費は毎日かかる費用なだけに、できるかぎり安く抑えたいところです。
食材費の高さが経営を圧迫していると感じたら、一度仕入先を見直してみるとよいかもしれません。
利益率を上げる方法②「食品ロスを減らす」
料理の食べ残しが多かったり、食材を仕入れすぎて消費期限内に処理できなかったりすると、その分経費が増えて利益率の低下につながります。
まだ食べられる食品を無駄にしてしまうことを「食品ロス」といいます。
農林水産省の発表によると、平成30年度の日本の食品ロスは推計600万トンで、そのうちの19%にあたる116万トンが外食産業による廃棄とされています。
こうした食品ロスを減らすには、「在庫管理を定期的に行う」、「オーダーミスをなくす」、「ロスの出にくい冷凍食品を活用する」などの方法が効果的です。
出典:農林水産省「食品ロスとは」
利益率を上げる方法③「高利益メニューを増やす」
原価が低く、利益を出しやすいメニューを増やすことも利益率の向上に効果的です。
売値に対する原価の割合を示す「原価率」は、低ければ低いほど一品あたりの利益が大きくなります。
メニューを考案する際は、原価率が低いフライドポテト・枝豆・ポテトサラダ・サワー系の酒類などの商品を増やすことで、利益率を上げられるでしょう。
ただし、メニューに原価率が低い商品しかないと、お客様から「このお店はコスパが悪い」と思われてしまい、お店の評価が下がってしまう危険もあります。
そうした事態を避けるためにも、高利益メニューだけでなく、儲けにつながりにくくても集客効果が高い「目玉商品」をバランスよく混ぜることが大切です。
利益率を上げる方法④「飲食店の回転率を上げる」
客単価が高い高級店は別ですが、一般的な飲食店では、回転率を上げることも利益率を上げるために欠かせません。
回転率を効率よく上げるには、客層に合わせて店内のレイアウトを変えることがおすすめです。
たとえば、1人での来店者が多い飲食店はテーブル席を少なくし、代わりにカウンター席を増やすことで店内のスペースを有効活用できて、回転率のアップにつながります。
利益率を上げる方法⑤「人件費を抑える」
飲食店を経営するうえで、食材費と並んでコストがかかるのが人件費です。利益率を上げるには、人件費を抑えることも重要になります。
ただし、人件費を抑えるために従業員の給与を下げるのは得策とはいえません。飲食業界は、ただでさえ人手不足が深刻といわれています。
給与の低下などの待遇面の悪化は、人材流出の原因になりやすいため注意が必要です。
人件費を削減させるには、お店が空いているアイドルタイムは従業員を少なくするなど、時間帯に合わせてシフトを調整するのが有効です。
利益率以外に飲食店経営をするうえで知っておくべきこと
飲食店の売上を黒字化させるには、利益率以外にも覚えておくべき指標があります。
その中でも代表的な指標である「損益分岐点」と「FL比率」について解説しましょう。
「損益分岐点」
損益分岐点とは、売上と経費がちょうど等しくなるような売上高のことで、損益分岐点を計算する事で、「使った分を回収するにはいくら売ればいいか?」がわかります。
つまり、「下回ると赤字になるぎりぎりのラインの売上額」がわかるのです。 損益分岐点は以下の計算式で求められます。
損益分岐点=固定費÷(1-変動費÷売上高)
仮に、売上高が200万円、固定費が90万円(家賃20万円+人件費40万円+その他経費30万円)で、変動費が80万円(食材費50万円+人件費(アルバイト)30万円)という店舗があった場合、以下の計算式のようになり、この店舗は150万円売上げなければ赤字になることがわかります。
90万円÷(1‐80万円÷200万円)=150万円
ちなみに、計算式を見てもわかるとおり、損益分岐点を下げるには「固定費」を下げることが効果的です。
仮に、先ほどの店舗の固定費が85万円だった場合、損益分岐点は約141万円まで下がります。
飲食店にとって立地は大事ですが、無理な家賃は経営を大いに圧迫しそうです。
また、記事の最初に触れた「なぜか潰れない街の定食屋」のカラクリはこの損益分岐点が低いことにあります。
住居と店舗が一体になっているため、多くのオーナーは賃料を支払う必要がなく、固定費をかなり安く抑えることに成功しているのです。
損益分岐点が低ければ、少々売り上げが少なくても潰れてしまうことはありません。
・「FL比率(FLコスト)」
FL比率とは、売上高に占める食材原価(Food)と人件費(Labor)の比率を求める数字で、飲食店経営で最も重視すべき指標の1つとして知られています。
「いかに原価と人件費を安くおさえるか?」が飲食店経営に大切かが伝わってきます。
FLコストとFL比率は以下の計算式で求めることができます。
・FLコスト=食材費+人件費
・FL比率=(食材費+人件費)÷売上高
先ほど、損益分岐点の計算で使用した、「売上高200万円、固定費が90万円(家賃20万円+人件費40万円+その他経費30万円)で、変動費が80万円(食材費50万円+人件費(アルバイト)30万円)」の店舗で見てみましょう。
・FLコスト= 50万円+40万円(社員給与)+30万円(アルバイト給与)=120万円
・FL比率= 120万円÷200万円 = 60%
一般的に、FL比率は50%代に収めるのが良いとされているようです。
注目記事:飲食業のFLコスト・FLコスト比率とは?適正に抑えて売り上げUP!
まとめ:飲食店経営を成功させるには利益率アップが必須
- ・飲食業界は利益を出しづらい業界。どんぶり勘定では簡単に赤字になってしまう。
- ・飲食店経営のために最低限知っておくべき利益は「粗利益」と「営業利益」。粗利益は「売上から原価を引いたもの」営業利益は、「売上から原価を引き、さらに経費を引いたもの」
- ・飲食店経営のために最低限知っておくべき経営指標は「損益分岐点」と「FL比率」。損益分岐点では、「下回ると赤字になるぎりぎりのラインの売上額」がわかり、「FL比率」では「売上高に占める食材原価(Food)と人件費(Labor)の比率」がわかります。